養育費を確実に支払ってもらうために


養育費の支払を確実に支払ってもらうために必要な7つのことをご紹介します。

個々の事情や状況によって異なる部分もあると思いますし、出来ない項目もあるかもしれませんが、少しでもご参考になさっていただけますと幸いです。


1 養育費に関する取り決めを行う

統計によると、母子世帯の中で「現在も養育費を受け取っている人」の割合は、19.7%ですが、そのうち、「養育費の取り決めをしている世帯」に限定すると、その割合は50.4%となっております。 つまり、具体的な取り決めが無ければ、支払をしてもらえる可能性は極めて低いということです。


2 公正証書として作成する

取り決め方法については、協議離婚、調停・審判、判決、など、いくつかの種類があります。

 

その中では、やはり、当事者双方が合意して決めた「協議離婚」の場合の方が、支払うことへの納得感が高く、履行率に優れます。

 

調停の場合、当事者の協議が整わず、第三者が介入しますので、調停委員から説得されるなど、本意で無いながら、やむを得ず応じた(応じさせられた)という状況になってしまうことも、往々にして生じます。

さらに、裁判での判決では、最終的に納得していない状態で裁判所から一方的に命じられる訳ですから、少なくとも、支払おうという意欲は、もっとも乏しいものとなる傾向にあります。

 

そして、協議離婚における取り決めは、やはり「口約束」ではなく、しっかりとした文書として作成しておくことが大切です。

養育費の支払は、他の法律行為(売買契約など)とは異なり、とても長期間に及ぶものだからです。

 

いくら、当初は、きちんと払うと強い気持ちを持っていても、生活環境は変化していきます。 再婚したり、新たに子どもが増えたりすれば、目の前にいる配偶者や子どもが最優先の問題となります。 再婚した配偶者から「うちも大変なのに、なぜ、そんなに前の配偶者に支払っているのか」等と言われることも珍しくありません。 そして、やはり、物理的な距離や時間の経過とともに、自覚が薄らいだり、考え方や価値観が変わることがあるからです。

 

当事者間で私的に取り交わす離婚協議書でも、いざ支払がなされない場合、調停や裁判などを通じて、判決や審判決定等を経て、給与や資産等に対する強制執行(差し押さえ)を行うことは出来ますが、かなり大きな費用や時間、労力などの負担が生じます。

 

公正証書であれば、「強制執行認諾」という条項を記載して作成するだけで、いざ不払いが生じた場合、すぐに、強制執行の申立を行うことが出来ますので、裁判所での手続きや弁護士の依頼で取られる費用や時間などの負担がありません。


3 継続可能な合理的金額を設定する

離婚後の生活は切実な問題ですが、あまり目先の金額にこだわって無理な条件を押し付けて、言い負かせることが、必ずしも賢明な方法になるとは限りません。

いざ、支払の途中で返済不能になってしまっては、元も子も無いからです。

また、あとあと、「無理やり条件を押し付けられた」「その金額は本意ではなかった」「法外な条件だった。騙された」などと思われてしまえば、支払意欲の低下にもつながります。

本当に必要となる養育費や、支払う側の収支状況などを慎重に検討し、出来る限り当事者双方が納得できる金額を設定することは、とても重要です。


4 連絡先など分かる状態にしておく

離れて生活する訳ですから、相手が転職や転居してしまったとか、再婚をしたとか、環境が変わっても、申告されないと知ることが出来ません。

相手の状況が見えない分だけ、お互いに、余計な疑念が生じる恐れもあります。

公正証書等で、申告義務の条項を入れ、お互いに連絡が取れる状態、家族構成などが分かる状態にしておくことが、履行の確保につながります。

 

・勤務先、住所、連絡先の変更、再婚や子どもの人数の増減などに関する申告義務の定め

 


5 面会交流など

子どもと全く会っていないと、子どもがどのような生活をしているのか、親としての実感が湧きにくいものです。

定期的に会っていれば「この子のために頑張って支払おう」「支払わないと子どもにあわせる顔がない」という気持ちも働きます。

また、可能であれば、決められた「面会交流」のみでなく、子どもからのメールや電話で近況報告をさせたり、

運動会や誕生日の様子を撮った写真を送る、などの工夫をすることも効果的です。

定期的な面会のみだと、「決めたルールだから」「義務だから会わせている(会っている)」等と感じて支払意欲の低下につながる可能性もあるからです。

 

なお、物理的な距離が遠くなってしまったり、仕事が多忙等の事情で、面会交流を行うことが難しい場合もあります。

もしくは、心情的な問題やDV・犯罪などの理由で、顔を合わせたくないとか、子どもに会わせられない、という場合もあります。

そのような場合でも、養育費を支払う側が、養育費を支払う対象である子供の生活状況や成長を知ることで、親としての実感を与えることは出来ます。

※親権者または子ども本人から、写真や手紙、メール等を通じて、誕生日、運動会、入学式、卒業式、趣味活動、など、生活状況や成長の様子を伝える。等

 


6 子どものために使われている実感

自分が支払った養育費が子どものために使われていて、そのお金の出所を子どもも認識してくれている、という実感は大切です。

 

・受取口座を子ども名義で作る

・子供からの手紙やメールを送る

 例:「●●の習い事に通うことが出来るようになりました。ありがとう。」

   「欲しかった●●を買ってもらいました。大切に使います。ありがとう。」

   等

 


7 養育費保証サービスを利用する

いくら支払う意欲があっても、将来、不慮の病気や怪我、事故、倒産、等による減収、失業、借金、などによって、返済の出来ない状態が生じないという保障はありません。

 

生命保険を利用する方法もありますが、契約で定めた一定の条件(怪我や病気)に該当する場合に限られます。

 

仮に掛け捨てで毎月1万円支払うとしたら年間12万円ですから、かえって、1年に1回、保証会社に対して、養育費の月額の1ヶ月分~0.3ヶ月分を支払う方が、遥かにコストパフォーマンスが高いですし、不払となった理由は問わずに立替払を受けることが出来、さらに相手への連絡もしてもらえます。

 

養育費保証サービスは、ご都合にあわせて、受取人単独で利用できる「養育費保証契約」と、支払者を含めた3者で口座自動引落などの設定を行う「養育費保証違約契約」とが選べます。